新型コロナウイルス感染症流行期におけるホスピス・緩和ケア病棟での面会に関する基本的考え方

日本ホスピス緩和ケア協会
2020年5月 2日改訂

1.はじめに

ホスピス・緩和ケア病棟では、患者とその家族を一つの単位としてとらえてケアを提供しています。 患者の死が間近になったと判断されるときに、医師、看護師等の病棟スタッフ(以下、スタッフとする)からそのことを家族に伝え、 家族が患者のもとを訪れて大切な時間を過ごせるように配慮することは重要なケアの一つです。
一方、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、ホスピス・緩和ケア病棟に入院する患者、スタッフ、 そして面会に訪れる家族の全てが新型コロナウイルスに感染する可能性があります。 私達は、施設内での感染拡大を予防するために、患者・家族・スタッフそれぞれの間の接触を必要最小限にすることや、 感染防護具(マスク・ゴーグル・手袋など)を適宜使用することが求められています。
この相反する状況、すなわち、緩和ケアにおける「つながり」や「寄り添い、触れ合うこと」の重要性と、 感染予防のために接触制限を行う必要性の双方を考慮しなくてはなりません。 この相反することが併存する現状において、当協会として、下記のように面会に関する基本的な考え方を提案します。
なお、この提案の内容は、当協会に加盟する各施設の対応を制限するものではありません。各施設では、下記の考え方を参考とし、 それぞれの施設の状況、地域の感染の状況、個別の患者と家族の状況に応じた対応を検討してください。

2.新型コロナウイルス感染症流行期における面会に関する基本的な考え方

1)多くの患者は自らの死期が近くなったとき、家族や親しい人など(以下、家族とする)との面会を希望し、 多くの家族も患者への面会を希望されるでしょう。そして、患者と家族のQOLを可能な限り向上することを目指してケアしているスタッフは、その希望を叶えたいと考えます。 しかし、感染症の流行によって危機的な状況となっている場合、患者や家族の切なる希望にも、その応え方を変更せざるを得ない場合があります。

2)一度に面会する家族は、できるだけ一人に制限することが望ましいでしょう。ただし、家族が高齢者であったり、身体的障害によって介助が必要な場合や、 一人での面会が精神的に大きな負担となることが予測される場合などは、感染のリスク対策を慎重に考慮し、複数での面会の方法を検討しましょう。

3)患者には、あらかじめ誰の面会や付き添いを希望するかを尋ねておきましょう。患者が希望する人にはそのことを伝え、連絡先を確認するとともに、 その人自身の面会や付き添いに関する希望を確認しておきましょう。

4)施設としての面会に関する方針は、その内容が変更されるたびに文書および口頭で患者と家族に伝えるようにしましょう。

5)患者と家族には、施設内での感染拡大等が生じた場合、さらに厳しい面会制限が行われる可能性があることを伝えておきましょう。

6)面会する人には、病院を訪れることによって生じるリスク(病院内で面会者が感染するリスク、面会者から患者やスタッフに感染が生じるリスク)を説明しておきましょう。

7)面会者に発熱や風邪様の症状がある場合には面会ができないことを説明し、来院時に体調を確認するとともに、もし、 面会後に自宅でそのような症状がみられたときは病棟に連絡するように伝えておきましょう。

8)面会者には、面会中常にマスクを着用すること、病棟内に入るときに手指消毒を行うことを求めましょう。

9)患者が新型コロナウイルス感染症に罹患しているか、その疑いが強いとき(PCR検査提出中、などの場合)は、面会者に感染のリスクについて詳しく説明しましょう。

10)その場合、面会の希望が切実で強ければ、マスク以外の防護具(手袋、フェースシールド・ゴーグル、ガウンなど)の使用法について説明したうえで、 面会の希望を確認して面会開始から面会が終わって防護具を脱ぐまで、スタッフが面会者に付き添うようにしましょう。

11)対面による面会の代替方法として、患者と家族がタブレットやスマートホンなどによってコミュニケーションを行うことができるように、 病棟内でこれらの機器が使用できる環境を整えることが望ましいでしょう。

12)面会が制限されている家族の不安に配慮して、スタッフからこまめに電話などで患者の体調や言動について説明し、 患者の様子や病状の変化を家族が理解できるようにしましょう。

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