地元の方々を中心に、「がん、緩和ケア」に対して知識を深めてもらう事を目的として、パネル展示と講演会を行った。
パネル展示については、がんの統計資料や当院の緩和ケアの取り組みなどを掲示した。
オレンジバルーンやグッズ配布も行い、来場して下さった方々に「がん、緩和ケア」に対しての関心を持ってもらうことが出来た。
講演会は、がん、緩和ケアについて、MSW、院長、ホスピス長が各々違う視点から講演を行った。
初日の中山MSWの話は、「がんに関する経済的な事」をテーマに、医療費や入院費などについての講演を行った。
経済的な負担の話が主体で、来場された方からは多くの質問が出された。「いつでも気軽に相談してほしい」という中山MSWの話で安心されていた。
2日目の中谷院長の講演は、がんの予防から治療までの詳しい話を行った。がんが発症する要因を生活習慣の視点から話し、
予防するための具体的な生活改善や、がん発症から終末期にかけての話をフローチャート形式で説明した。
最後には、実際にがんで当院の緩和ケア病棟で死を迎えた方々の、病棟での様子や、想い出などを語り、
来場された方のアンケートには「感動して涙が出てしまった。」などのコメントがあり、当院の緩和ケアの現状に触れてもらう事が出来た。
3日目の岡本ホスピス長の話は、緩和ケアの観点から医療全体に対して、患者側の立場で意識すべきことや人それぞれの価値観の違いなどについての講演だった。
「医療との付き合いでは、自分が本当に大切にしたい事をはっきりと述べることが重要」という話には、非常に納得されていた様子だった。
来場された方への問いかけや、講師に対する質問などが多く、双方向性のある内容だった。聞きに来た方々は、自分の意見や、経験、
不安に思っていることなどを発言することができ、「聞きたい事が聞けて良かった。」などのコメントがあり満足して頂けた。
緩和ケアに対して非常に興味を持って頂けたようで、講演後は「岡本ホスピス長の診察を受けたい」などと言って下さる方も多かった。
3日間の講演会、展示会を通して来場者には「がん、緩和ケア」に対しての知識を深めて頂く事が出来たと感じる。今後も今回のような活動を通して、
地域の住民に「緩和ケア」について考えてもらえる機会を作ることで、多くの方が自分の「死」の迎え方に対して真剣に向き合えるようにしたいと思う。
10月7日〜13日 札幌徳洲会病院と札幌南青洲病院にてホスピス緩和ケア、施設紹介のパネル展示およびオレンジバルーンプロジェクトのグッズ配布。
10月13日(土)医療講演会
演題 「がんになったら、考えてほしいこと」
講師 四十坊 克也(札幌南青洲病院 院長)
例年開催している院内での緩和ケアチームの紹介パネル展示に加え、今年は10月に地域初の緩和ケア病棟がオープンするのを記念し、
@ハーピスト池田千鶴子さんによるトーク&コンサート。A緩和ケア病棟の内覧会を開催した。
トーク&コンサートでは当院緩和ケア科医師からの病棟の紹介の後、ホスピス緩和ケアに造詣の深い池田千鶴子さんからの、
ホスピスマインドについての語りと心にしみいるハープの調べで癒しを感じていただいた。
内覧会は医療関係者と一般市民の2部に分けて開催。「病院くささの排除」をコンセプトに作られた地域初の緩和ケア病棟を職員の案内で見学していただいた。
実際のホスピス緩和ケア病棟を初めて見る方が多く、随所で感心の声が聞かれた。
当日はオ−プニング企画でマジックショ−があり、参加者がリラックスした雰囲気の中で開催。
医療講演は2本あり、始めに当院副院長河島秀昭医師による「がん治療と緩和ケア」のテ−マで、最近のがん治療から早期に緩和ケアを並行して受けることの重要性について講演し、
多くの参加者がメモを取ったり熱心に聴いてくれていた。
次にホスピスケアセンタ−長小林良裕医師による、「世界ホスピス・緩和ケアデ−」の説明や緩和ケアについての講演があった。
オレンジバル−ンの風船が会場中に飾られ、持ち帰る参加使者も多数いらした。
パネル展示やがん相談コ−ナ−、無料コ−ヒ−サ−ビスもあり、土曜午後のひと時を多くの参加者と緩和ケアについて知り、考える一日となった。
10月9日(火)〜12日(金)の4日間を「がん・緩和ケアを学ぼう2012」と題し緩和ケア啓発を開催した。
ホスピタルストリートでのパネル展示や、1日限定でエントランスホールでのお楽しみ体験イベントなどを開催したところ、がん・緩和ケアを紹介するパネル展示では、
患者さまやご家族、お見舞いに訪れた一般市民、介護・医療職など、多くの方が足を止めて見て下さった。
そのほか、緩和ケアに関するクイズや、相談コーナー、栄養補助ドリンクの情報提供・試飲などのイベントを行ない、緩和ケアを知っていただくよい機会となった。
がんの痛みはTotal Painといわれるようにいくつもの要素(身体的、精神的、社会的、Spiritual)から成り、各々の要素をきちんと評価することが大切といわれている。
そのように考えると、身体的な苦痛以外は幾分か心理社会的要因により痛みが生じたり悪化したりすると想定される。
がんの診療の場面だけを考えても様々な気持ちのありようがTotal Painに影響する。
怒り、不安、うつといった気持の変化は大なり小なり殆どの患者さんが感じるものだが、大規模調査でがん患者さんの約半数(47%)がなんらかの精神科疾患の診断がつく、
という結果が出ている。実はがん患者さんのこころの痛みは通常以上に強く、長く続いてしまい看過できない状態となる場合がとても多い。
がんを罹患すると身体的、社会的状態がうつや不安を引き起こす、逆にこころの状態が身体や対人関係な社会的にも影響を及ぼすなど複数の問題が絡み合うためかもしれない。
例えば精密検査をしてがんが見つかったとき、病気が進んだときなど、その都度大きな衝撃にさらされるが、通常は2週間程度でほぼ日常生活に問題ない状態に回復するといわれる。
その一方、日常の勤務や家事が手につかない状態が持続する場合もあり、こうなると精神医療の介入が望ましい状態である可能性がある。
うつ病の症状には不眠、食欲不振、倦怠感など身体症状もあるため、病気や治療が原因であると考え精神科診療を受けず辛い状況を耐え忍ぶ方が実は多くいらっしゃる。
こころの痛みが強いと様々な悪影響が生じ、大切ながん治療自体が行えなくなったり、体調良く過ごせるはずの時間を無駄にしてしまったりと残念な結果に繋がりかねない。
病気や治療のせいと見過ごさず、早めに医療者に御相談いただくことが大切になる。
こころの治療は大きく分けて精神療法と薬物療法に分かれる。当院には臨床心理士もいるため、医師以上に心理療法の専門職として様々なカウンセリング手法を組み込むことが可能である。
ただ精神療法も負担になるほど辛い状態では、まずは薬剤を使用して改善を図ることもある。こころの治療薬も多くの種類があり、おひとりずつ調整している。
患者さん御自身も、御家族も、そして医療者の側も「がんだからこころが辛いのは仕方ない」と見逃さず、お気軽にメンタルケアの専門スタッフに御相談いただきたいと思う。
@ 10月9日(火)〜12日(金) 緩和ケアパネル展示
A 10月10日(水) 緩和ケアイベント
院内1階ロビーにて、オレンジバルーンや緩和ケアに関する情報冊子を配布し、がん緩和ケア認定看護師や看護師による相談コーナーを設け、緩和ケアを広く知ってもらう機会となった。
今年は、約100名の外来・入院患者、家族の方に訪れていただき、緩和ケアのシンボルカラーである「オレンジ」を広く知ってもらえるようオレンジジュースを配布し、好評をいただいた。
B 10月11日(木)緩和ケア講演会
院内職員を対象とした、緩和ケア講演会を実施した。北海道医療大学 客員教授の石垣 靖子氏をお招きし、「看護実践の倫理〜よりよいケアの実現のために〜」というテーマで講演していただいた。
院内より89名の医師・看護師が参加し、患者さんの話を聴き、その患者さんにとってよりよい医療・看護とは何か、日々の看護について改めて考える機会となった。
ホスピス緩和ケア週間を記念し、東札幌病院 副院長の小池和彦氏による講義を行った。入院患者・家族の他、他の病院の通院患者や遺族の方も参加し、真剣に耳を傾けていた。
講義後には、質問や意見が活発に会場から出され、アンケート結果でも「まだまだ医療職も含め、暗いイメージを持っている人が多い。適切なPRが必要」
「もっと早く知ることができていれば良かった。これから緩和ケアにシフトしたいと思っている」等のご意見をいただき、
緩和ケアの普及活動の重要性と、継続していく必要性を強く感じた。
また、個別相談のニーズもあるが、どこに相談に行ったらよいか分からないという意見もあり、医療相談窓口のPRの必要性も感じた。